2012年も、はや、師走。世の中の変化のスピードが益々速くなっていくように感じます。毎日見ているテレビでも何が大切なのかじっくり考えるいとまもなく番組が流れすぎていきます。そんな中で、ずっと心にとどまっている番組があります。
糀屋の女将 浅利妙峰さんを取り上げた「プロフェッショナル」というNHKの番組です。肉も魚も簡単においしくできる調味料として「塩糀」が今、一大ブームを巻き起こしていますね。この「塩糀」を初めて世の中に紹介した方が妙峰さんです。妙峰さんのお店、糀屋本店は、大分で300年以上続く老舗糀屋です。糀は、みそやしょうゆ、みりんや甘酒を造る原料として日本の食文化に欠かせないもので、その歴史は1000年を越えます。しかし、家庭でみそや甘酒がほとんど造られなくなった現在、各地の糀屋は次々と廃業に追い込まれています。妙峰さんのお店も同様で折詰弁当箱の組み立て内職を初め様々な副業をしながら生計を立ててきたそうです。そして、妙峰さんの父親が病で倒れ、廃業するか否かの決断を迫られたとき、もう一度、糀に真剣に向き合おうと専門書を読み漁ってたどり着いたのが江戸時代の料理本「本朝食鑑」でした。そこに記されていた「塩糀」をアレンジして売り出したところ、一大ブームになったのです。
妙峰さんは、「塩糀」を使ったレシピを1000以上も考案、その魅力を伝えようと定期的に料理の講習会を開いています。今年は、なんとニューヨークでも開催しました。また、妙峰さんは、各地の糀屋に足を運び、店先で無料料理講習会を開いたり、客を呼ぶ工夫を伝えたりして自信を無くしている仲間たちが前向きになれるよう共に考え、励ましています。それは、今のブームを一過性で終わらせず長く定着させるためには、妙峰さんのお店が一人勝ちするのではなく、全国の糀屋が元気になることが必要、と考えているからだそうです。
番組の中に登場した富山の糀屋さんは、日々の仕事は一所懸命されているものの、新しい発想で、昨日と違う何かに前向きに取り組もうとの姿勢にかけていました。それが、妙峰さんに背中を押されて「塩糀」を使ったオリジナル料理を商店街の七夕祭りの模擬店で販売するまでになりました。昨年まではフランクフルトを売っていたそうで、七夕祭りに店の商品である「糀」を宣伝しようとの発想が全くなかったのです。この富山の糀屋さんと同様、妙峰さんも跡取り娘として一所懸命、糀屋本店を経営してきました。内職をして生計を立ててでも店を続けてきました。ですが、もう一度「糀」と真剣に向き合おうと思うまでは、同じ場所で足踏みをしていたのです。足を動かしても全く前に進んでいませんでした。真剣に「糀」に向き合うことで一歩前に踏み出でたのです。
「宝は、足元にあった」と気づいたとき、世界が変わったのです。小さな成功が次の成功を呼び、人との出会いが次の機会をもたらしました。真に、一歩踏み出せば、世界は変わるのですね。それと、妙峰さんの笑顔はとても魅力的です。カラカラと大声で笑う姿は、肝っ玉母さんそのものです。やはり、笑顔は自分も他人も前向きにしてくれますね。筆者も、来年こそ、妙峰さんをお手本に笑顔で一歩踏み出したいですね。
文責:内山 朗tnc会員 山梨在住(2012.12.4)